ヴェネチアンビーズとはイタリア共和国北東部に位置するヴェネツィア(英:ベニス)地域で伝統的に作られているガラス工芸品のヴェネチアングラス(ヴェネツィアングラス)のビーズのことです。
ヴェネチアングラスとはヴェネツィア地域で作られたガラス製品のブランド名ですが、ヴェネチアングラスの呼称は日本固有の俗称になりまして、イタリア本国ではヴェネチアングラスはムラーノグラスと呼ばれていますので、ヴェネチアンビーズは正しくはムラーノグラスビーズになります。
ヴェネチアングラスの発祥は、7世紀末期から1000年以上に亘り続いた海洋国家のヴェネツィア共和国(ベニス共和国)が東地中海貿易によって栄えた中で、共和国が国を挙げてガラス製造に乗り出したことに始まると考えられています。
1200年代の頃にはガラス組合も結成され、火災の延焼を防ぐ目的と、ヴェネチアングラスの技術が他国に流失するのを防ぐという理由により、全てのガラス工房とガラス職人とその家族はムラーノ島へ強制移住されたため、ヴェネチアングラスはムラーノ島でのみ製造されるようになったといわれています。
ムラーノ島の狭い島内に工房が密集したことでガラス製造技術の切磋琢磨が進み、純度の高い透明のクリスタルガラス「クリスタッロ」の発明などにより、ルネサンス期(15世紀~16世紀)にはその繁栄は頂点に達したといわれています。
そして、現在のムラーノ島にも数多くのガラス工房が軒を連ねており、親から子へ、子からまたその子へと脈々と継承されてきた伝統技法が活かされた美しいガラス工芸品の数々が製造されています。
◆◆◆ヴェネチアングラスにみられる技法の一例◆◆◆
◇アイスガラス – 高温になったガラスを水で急冷して模様を生じさせる技法。
◇マーブルグラス – 2色以上の色ガラスで大理石や天然石のような流動的な模様を再現する技法。
◇オロロット – オロロットは「金(オロ)が割れた(ロット)」の意味で、ゴールドフォイル(金箔)やシルバーフォイル(銀箔)を溶着したガラスをさらに透明なガラスで覆って仕上げることで、箔の自然な割れが模様となる技法。
◇アヴェンチュリーナ – 砂金石といわれる酸化銅の微小な粉を溶かし込んで金ラメのような輝きを内包させる技法。
◇ソンメルソ – ソンメルソは「埋め込んだ」の意味で、透明のガラスの中に色ガラスやゴールドフォイル(金箔)やアヴェンチュリーナなどの装飾を封入させて仕上げる技法。