宝石名 | ジルコン |
英名 | Zircon |
和名 | 風信子石(ひやしんすせき) |
鉱物名 | 風信子鉱(ひやしんすこう) |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
化学組成 | ジルコニウムの珪酸塩鉱物 |
化学式 | ZrSiO4 |
結晶系 | 正方晶系 |
モース硬度 | 6-7.5 |
靭性 | 普通 |
劈開性 | 不明瞭 |
比重 | 3.9-4.7 |
屈折率 | 1.81-2.02 |
分散度 | 0.039 |
光沢 | ダイヤモンド光沢 |
色 | カラーレス、ブルー、グリーン、レッド、イエロー、ブラウン |
誕生石 | 12月の誕生石 |
石言葉 | 成功-祈願-平和-平安 |
■12月の誕生石、ジルコンとは?
ジルコンは12月の誕生石です。
1958年に制定された日本の誕生石に63年ぶりに10石の新しい誕生石が追加されることになり、2021年12月20日にジルコンは12月の誕生石に追加されました。
ジルコンはカラーバリエーションが豊富な宝石で、無色、赤色系、褐色系、橙色系、黄色系、青色系、緑色系、などがあり、彩度や明度も加えると実に様々な色相を呈します。
ジルコンはジルコニウムのケイ酸塩鉱物で、化学式は ZrSiO4 、結晶系は正方晶系、比重 3.9~4.7、モース硬度 6-7.5、靭性は普通です。
ジルコンの比重は色相により大きく異なり、3.982と低いものから4.705と高いものまであることを、英国の化学者「アーサーハーバートチャーチ卿(Sir Arthur Herbert Church)」が発見しました。
数ある天然宝石の中でも屈折率、分散率ともに高く、「金剛光沢(こんごうこうたく)」と呼ばれるダイヤモンドに見られる特徴的な輝き方をする物理的性質を持つ宝石で、ブリリアンス(入射した光が反射して見える白色光線の輝き)やファイア(入射した白色光線が屈折反射することにより分光された虹色の輝き)を伴って煌めく宝石です。
名前が似ていることからキュービック・ジルコニアと混同されがちですが、天然に産するジルコンと、人造石のキュービック・ジルコニアは、それぞれ全く異なる別の宝石になります。
■ジルコンの意味とは?名前の由来について
鉱物学の書籍「Key To Precious Stones」では、黄色、褐色、無色のジルコンの名前は「jargon」や「jargoon」と書かれています。
1937年に出版された「Key To Precious Stones」は、イギリスとアイルランドの鉱物学会の会長を務めていた地質学者の「レオナルド・ジェームス・スペンサー氏(Leonard James Spencer)」の著書で、主に鉱物学の観点から宝石についてが説明されています。
ジルコンはかつて「jargon」と呼ばれていましたが、転訛して現在の「zircon」になったと考えられています。
「jargon」の名は、「金のような」を意味するペルシャ語の「zar-gun」に関連しているとも言われています。
また、赤色系の宝石質のジルコンは、かつて「hyacinth」や「jacinth」の名で知られていましたが、この名はギリシャ神話の由来の花の「ヒヤシンス(hyacinth)」に由来すると考えられています。
和名の「風信子鉱(ひやしんすこう)」の名も「ヒヤシンス」が由来になっています。
ヒヤシンスはギリシャ神話に出てくる同性愛者の美青年「ヒュアキントス(hyakinthos)」の名に由来する花の名前です。
ヒュアキントスは彼を愛していた神アポローンが誤って投げた円盤が頭部に当たって絶命してしまい、ヒュアキントスの頭部から流れる血から咲き始めた花がヒヤシンスとなったと伝えられています。
現代の日本でヒヤシンスの名で知られるのは、青やピンクや白の花を咲かせるキジカクシ科の植物ですが、古代ギリシアではアヤメ科の植物、或いはスミレ科のパンジーがヒアシンスと呼ばれていたと考えられています。
■ジルコンの歴史について
無色透明(カラーレス)のジルコンである「ホワイト・ジルコン」は、1900年代初頭頃よりダイヤモンドの代替石として珍重され、装飾用宝石として用いられてきた歴史があります。
スリランカ産のものは「マタラ・ダイヤモンド(Matara diamond)」や「マチュラ・ダイヤモンド(Matura diamond)」「セイロン・ダイヤモンド(Ceylon diamond)」などの名で、ミャンマー産のものは「ラングーン・ダイヤモンド(Rangoon diamond)」などの名で呼ばれていました。
ニューヨークの宝石店「ティファニー」の宝石バイヤーとしても有名だった、歴史に名を遺す非凡な鉱物学者・宝石鑑定士(ジェモロジスト)のジョージ・フレデリック・クンツ博士(George Frederick Kunz)は、顕著なジルコンの支持者でした。
クンツ博士は、ブルーゾイサイトを「タンザナイト」と、ピンクベリルを「モルガナイト」と命名したことでも知られていますが、ダイヤモンドに似た強い煌めきが楽しめるジルコンを奨励するために「スターライト」という宝石名を提案しましたが、この宝石名は周知されることはありませんでした。
■ジルコンの加熱処理について
ジルコンは天然で大きな宝石質の透明な結晶で産出することは皆無と言われており、宝石としてカットされるルースのほとんどは、不透明な結晶を加熱処理して得られたものです。
青色系は還元雰囲気下(酸化を還元させる気体中)で加熱処理を施し、黄色系は酸化雰囲気下(酸化性の気体中)にて加熱処理を施すと得られます。
無色透明なものは、いずれの条件でもある程度の割合で得られるとのことです。
加熱処理が施されたカンボジア産のブルー・ジルコンは20世紀初頭に初めて宝石市場に登場しました。
ブルー・ジルコンは不透明なジルコンに加熱処理を施すことによって、魅力的な青い色が引き出されているものですが、どこの産地のジルコンもであっても加熱処理を施せば全て青色になる訳ではなく、唯一カンボジア産のジルコンのみが宝石に相応しい青色に変わると言われています。
■ダイヤモンド類似石について
ダイヤモンド以外の無色透明の宝石で、ダイヤモンドの代替品として使われることのある宝石は「ダイヤモンド類似石」とも呼ばれています。
天然石のダイヤモンド類似石には、ホワイトジルコンのほかに、ホワイトサファイア、ホワイトトパーズ、ホワイトベリル(ゴシェナイト)、ロッククリスタルなどがあります。
■ホワイト・ジルコン (カラーレス・ジルコン) の屈折率 1.82~2.02
■ホワイト・サファイア (カラーレス・サファイア) の屈折率 1.74~1.77
■ホワイト・トパーズ (カラーレス・トパーズ) の屈折率 1.61~1.62
■ゴシェナイト (カラーレス・ベリル、ホワイト・ベリル) の屈折率 1.57~1.58
■ロッククリスタル (カラーレス・クリスタル) の屈折率 1.54~1.56
天然石のダイヤモンド類似石の中で【ダイヤモンド光沢】※を有しているのはジルコンのみで、ジルコンは最もダイヤモンドに近い輝きを持つ唯一の天然宝石と言えます。
※【ダイヤモンド光沢】とは、ダイヤモンドにみられる光り輝き方の特徴ことで、ダイヤモンドの和名の【金剛石】の名に因んで【金剛光沢(こんごうこうたく)】とも呼ばれます。【屈折率】が1.9以上と高い屈折率を有する宝石はこの金剛光沢が認められ、ダイヤモンドの様に【ブリリアンス】※や【ファイア】※を放って煌めきます。
※【屈折率】とは、入射した光を反射する角度のこと。
※【ブリリアンス】とは、宝石の表面や内部に入射した光が反射して見える白色光線の輝きのこと。
※【ファイア】とは、宝石の内部に入射した白色光線が屈折反射により分光された虹色の輝きのこと。
ちなみに、合成石のダイヤモンド類似石には、合成石モアッサナイトや前述の人工石のキュービック・ジルコニアなどがあり、これらの合成宝石は全て屈折率は1.9以上あるため金剛光沢を有しています。
■合成石モアッサナイトの屈折率 2.65~2.69
■キュービック・ジルコニアの屈折率 2.16~2.17
■ジルコンの石言葉・宝石言葉
ジルコンの石言葉(宝石言葉)は、成功-祈願-平和-平安です。
石言葉とは、一つ一つの宝石に与えられた言葉のことで、各々の宝石の持つ特質や歴史・言い伝えなどから、象徴的な意味をもつ言葉が選ばれています。
石言葉には、各々の宝石の持つ特質や色が与える心身への影響が研究された心理学が応用されていますので、自身が受ける心理的影響を生かしたセルフマネジメントや、他人に与える心理的影響を活かした印象戦略などに活用することができます。
■ジルコンの取り扱いについて
ジルコンは紫外線や熱に晒されると退色してしまう性質があるため、色褪せを防止するためにも光を透過しない箱等に収納し冷暗所での保管をおすすめします。
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